2016年04月20日

Great Escape to Sea Ranch California

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一泊のエスケイプでSea Ranch Lodge(シーランチ•ロッジ)へでかけた。


サンフランシスコからゴールデンゲイトブリッジを渡り、広大な牛の放牧地が連なるペタルマを抜けると、太平洋を左に海岸線をひた走る2時間半のドライブで、潮騒と水平線の世界へ逃避できる。


Sea Ranch1960年代後半に建築家とインテリアデザイナーたちが取り組んだ、モダン建築と自然環境融合のプロジェクトとして、現在に至るまでこれほどの成功例は他に類を見ない。


http://searanchlodge.com


Third Bay Tradition

この、Sea Ranchを中心とするThird Bay Tradition (第三のベイエリア流)と名付けられた開発プロジェクトは1964年から1972年までの間に進行した。(ベイエリアとは、サンフランシスコとその周辺都市、バークリーのあるイーストベイからAppleなど数多くのIT 企業がつらなるシリコンバレーまでを含む)


建築デザインはモダニズムと現地の風土を生かしたローカリズムのハイブリッドをコンセプトとした。環境デザインとしての建築を命題としたモデルとして、現在に至るまで、その美意識と価値観は生き続けている。


建築家でもありプランナーでもあったAl Boekeはこの荒削りの海岸線が造るダイナミックな自然の美しさを、できるだけ手付かずのまま残しつつ成立するコミュニティ開発の構想をあたためていた。

この構想がJoseph EsherickCharles Moore, Donlyn Lyndon, William TurnbullRichard Whitaker と、造園建築家でSea Ranchのマスタープランを創り上げた Lawrence Halprinによって具体化されていった。


http://searanchlodge.com/about/history


Sea Ranchコミュニティの全体の敷地は海岸線に沿って10マイル(約16km)にも達する。海に面した19の客室を持つSea Ranch Lodgeと個人邸宅のコンドミニアム、バケーションレンタルのハウスユニット、消防署、郵便局、ビジネスセンター、ピクニックロット、ハイキングトレイル、ゴルフコースなどが配置されている。


コミュニティ内の建築はレッドウッドとシーダーの木材のみを使用。

ワイルドでオープンな自然の中に在って、風化し、朽ち果てたようにたたずんでいる

海からの強い風を後方へ受け流すために、屋根に後ろを高くした傾斜をつけている。雨水が壁面の板を沿って、そのまま大地へ落ちる。経年変化でレッドウッドが赤褐色からチャコールグレーに変化している。墨流しのような木の色彩が持つ粗野な風合いが、コミュニティの顔を創っている。

これら木材の経年変化は、初めから計算されていて、部分的な修復を重ねながら、地域風土の一部となって、その存在を永遠のものにしている。


10年前に訪れたときと同じ景観が、10年後も変わらず存在する。


水平(横長)と垂直(縦長)のコンポジションで窓が配置され、他には何もない。

各部屋の入り口には大きくオレンジ色で部屋番号がペイントされている。このデザイン感性はポートランドのACE Hotelによく似ている。


どの窓からも、切り立った岸壁が連なる海岸線のかなたに水平線を眺めることができる。水平線を覆う空には、早朝の霧の帯が走り、海との境を失いつつ、風景の緊張をわずかにやわらげている。

晴れた日は波立つ太平洋と淡い水色の空のコントラストが抽象画のように想像力をかきたてる。

霧の朝はこの景観がセンチメンタルな孤独を呼んで、日常の騒がしさがもたらした疲労感をいやしてくれる以上に、別の世界へと新しい思いを用意してくれる。


いつもと違う思いが、朝食とともにある。


ロッジはペットフレンドリーをポリシーとしていて、犬たちにも魅力だ。


ロッジのバーとレストランからは目前に180度の眺望が楽しめ、夕日の落ちるのをながめながらの冷えたワインは格別のひととき。

時間と風景を共有するのは宿泊客とコミュニティの常連の人たちだけで、自然と時間のダイナミズム対して、人の占める割合が圧倒的に小さい。だれもが、無口になり、無意識に心を洗われ、少しだけ謙虚になれるチャンスを与えられる。


潮騒と松や杉の梢を鳴らす風の音、深い木の香り、麦わらのような草の息と目にしみる花の色など、普段の日常では手に入らないたくさんの要素が、気持ちを本来帰っていく場所にもどしてくれる。


ETHEREALというワードがぴったりの、スピリチュアルで微妙な空気感が、海岸を永遠に打ち続ける波のように、あふれるように存在している。


週末がイースターサンデーという春浅いある日。


どこにいても、風の歌を聴いた。


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2016年03月06日

Less is More. 持たない、ゆたかさ。

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職業柄、モノが増える。サンプルやプロトタイプ、カタログ撮影用に送られてきたもの、旅先で得た想い出込みのもの、もちろん好きで買ったものなど。

どれも手放せない。

ガレージセールをやったり、オンラインで売ったり、寄付したり、人にもらっていただいたり、ここ8年近い時間をかけてモノを減らすプロジェクトに取り組んできた。増えるのは簡単だが、減らすのは簡単ではない。ゴミなら捨てられるし、リサイクルもできるが、モノはそうはいかない。


何も無い箱としてのスペース(部屋)に、慎重に選んでモノを足していく行為は楽しくてポジティブになれるが、すでにほぼ満杯のスペースから、慎重に選んでモノを減らしていく行為には、ある種の哲学が必要になる。


この哲学に人は魅力を感じ、あこがれ、助けられ、そして時には哲学のみで終息する。


Less is More. は「持たない、ゆたかさ」というコンセプトで、寝具レンタルのニュービジネスモデルに取り組むクライアントのために用意した。

ヴァージニア州レストンに住んでいたアメリカ人のライフスタイルからインスパイアされた個人的ないきさつが背景にある。


物質的に持たないこと(Less)で、精神的な満足を得ること(More)が、理想的なセオリーとなる。

ただ、Lessイコール、即、Moreにはならない。

Less Moreの間に、物質的なゆたかさから解放されることで得るゆとり(スペース)を精神的な満足で満たしていくライフスタイルが不可欠となる。 この部分が達成されないと、単にストイックを強いることになり、かえってストレスが増える。そのストレスを埋めるために、また物質的な満足に走り、事態はさらに複雑になる。


“More than enough.”とよくアメリカ人が言う。

直訳すると充分以上という意味で、過剰になることを防ぐ、必要以上の行為や量を抑える場合の使いやすい表現である。

その場合、もちろん、何が充分であるのか、その適量、適度を知っていないといけない。


ニューオリンズ生まれで 、東大建築学部を卒業したANZY BROWN氏が日本の江戸時代のライフスタイルについて書いたユニークな本“Just Enough” がある。(日本語版「江戸に学ぶエコ生活術」)

自然にさからわず、創意工夫で、 健全かつゆたかに暮らしていた当時の人々の価値観とライフスタイルをイラスト入りで、分析、解説している。

Lessons in Living Green From Traditional Japan.

というサブコピーでもわかるように、自然環境と共に生きることが条件だった当時の暮らしの知恵が事細かに紹介されている。


自分自身の仕事をときおり虚しく感じることがある。

これ以上作ってどうなるのだろうか?という単純な疑問がわいてくる。

もちろん、人の暮らしを素敵にするデザインはたくさんあるし、そういうデザインをするデザイナーもたくさんいる。


そんな中で、せめて心がけることは、本物を見極める目を養うこと。

本物は人でいうと、穏やかで寡黙であたたかい人。

穏やかで、寡黙で、あたたかいモノが見つかると、また手に入れたくなる。

そういう人と出会うと、親しくなりたいと思うのと同じだ。


そうやって、今日もモノを減らすプロジェクトは続く。

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2016年02月16日

ジャーナルページについて

サイトのリニューアルを機会にジャーナル(ブログ)のページを創りました。ほんとうの目的は、面倒くさがり屋の自分を律するため。ともすれば簡単に流れていってしまう日常の想いを、どこかでとどめる場になればと思ったからです。

普段はBerkeley(サンフランシスコ郊外)で暮らしています。日本で人とコミュニケーションをとる機会は限られています。

そんな中、親しい人や仕事関係で縁を得た方たちに、たまにサイトをのぞいてもらえること自体が、自分自身にとって、ひとつのドライブ(目的に向かって進むポジティブなエネルギー)になるのではないかと期待しています。

posted by YOKO at 05:15| Comment(0) | journal