2016年03月17日

女性の生き方 1

10-book inside_5447.jpg

平野麻子さんという女性がいる。


2011年に「大切な人の看取り方」という本を翻訳出版した。原本はアメリカ人ホスピス看護師 デニー•コープが書いた。デニーとは、ジム•ルイスを看取った後、ホスピスでボランティアをしていたときに知り合った。

昨年12月、デニーからメールが来た。日本人女性で本を読んだ人がコンタクトしてきたという。当時、私は自分自身のサイトをリニューアルするために2、3ヶ月閉じていたため、 私に直接コンタクトができなかったという事情があった。

すぐに、コンタクトをしてくれた女性、平野麻子さんにメールを返した。

1月、東京でお会いして、いろいろお話をうかがった。


いろいろな女性に出会ってきた。それぞれ魅力的な生き方をしている。

彼女はその中でも格別にユニークだった。


もとは女優さんで(どうりで、美しい)若いころ、灰とダイアモンドを映画化、数々の受賞歴を持つ映画監督アンジェイ•ワイダを師事して、演劇の勉強にポーランドへ渡る。現地で知り合った当時学生だったポーランド人と恋に落ち結婚、二人目の子供が生まれる前に、ポーランド政変(連帯運動)の動乱の中、日本に帰国。その後はふたりの子供を一人で育てられた。

子供さんは成長して、その後、ポーランドの実の父親との対面をはたされた。


麻子さんはその後再婚され、7年前にその方の最期を看取られた。

「大切な人の看取り方」に出会ったのは、最近のことで、誰もが通っていく死のプロセスについて、冷静に具体的にわかりやすく解き明かすことで、看取る、看取られるという負担や不安の大きいプロセスを、軽くしてくれる本の内容に衝撃を受けて、娘さんが英語のレターを作成、デニーにコンタクトしたというストーリーとなる。


翻訳者の私が感じた以上の感動をたぶん麻子さんは感じてくれたと思う。


私自身の想いは、すでにオリジナルを読んだときに最高値に達していて、それからは日本語訳という作業に徹していた。当時の飛鳥新社の編集者だった島口典子さんとのやりとりは 現実的で、私は感情的なことを通り越して、出版というリアリティに徹していた。

時を移さず、あの3.11の津波が日本を襲った。父をホスピスで看取っていた最中だった。出版を遅らし、そして、父が静かに逝った。



平野麻子さんは、「大切な人の看取り方」の読み聞かせを始められた。もともと女優さんなので、発声の訓練を受けている。朗読を生涯の仕事として、さまざまな形での活動をすでにされている。

書き言葉としての本の内容を、語り部として、さらにその表現を深めないといけないことを想像すると、これからの平野麻子さんの活動には注目すべきものがある。


死について語ることががタブー視されるわりには、だれもが死ぬ。


生まれることを喜ぶのは当然だが、死ぬことを隠したり、敗北視したりしてしまうのは、文明人特有の価値観なのだろうか?

かくいう自分も、それほど死について積極的に考えるほうではない。当然、死ぬのは怖いし、大切な人を失うことは耐え難い。

ただ、平野麻子さんのような女性が現実的に登場してくださったことを、むしろ明るい光が射したように感じる。

彼女が語る死や看取りそのものが、彼女が経験してきた人生のゆたかさや喜怒哀楽や人間愛によって深いものになっていくことはまちがいない。


草の根のひたむきさと強さが、麻子さんの魅力だ。


終末期鎮静や看取りの現実など、日本ではある種不確実な了解や認識が表面化で進行し、それがある日突然、常識になっていることに気づく。常識とまではいかなくても、ある日、誰もが知ることになっているという不思議な社会現象がある。



看取る、看取られるの現実や立場に関係なく、一度、平野麻子さんの朗読会を訪れてみていただけたらと思う。

(「大切な人の看取り方」は飛鳥新社から出版された後、再版されていない。本の内容については朗読会で知ることをお勧めしたい。)



5月までの朗読会は3月22日火曜日午後7時/4月21日木曜日午後1時/5月24日午前9時

小田急線の鶴川駅北口より徒歩2分、「和光大学ポプリホール プレイルーム」にて。

朗読のあと、座談のような形でおしゃべりの時間予定しているそうです。

posted by YOKO at 11:23| Comment(0) | topics
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: