2016年03月06日

Less is More. 持たない、ゆたかさ。

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職業柄、モノが増える。サンプルやプロトタイプ、カタログ撮影用に送られてきたもの、旅先で得た想い出込みのもの、もちろん好きで買ったものなど。

どれも手放せない。

ガレージセールをやったり、オンラインで売ったり、寄付したり、人にもらっていただいたり、ここ8年近い時間をかけてモノを減らすプロジェクトに取り組んできた。増えるのは簡単だが、減らすのは簡単ではない。ゴミなら捨てられるし、リサイクルもできるが、モノはそうはいかない。


何も無い箱としてのスペース(部屋)に、慎重に選んでモノを足していく行為は楽しくてポジティブになれるが、すでにほぼ満杯のスペースから、慎重に選んでモノを減らしていく行為には、ある種の哲学が必要になる。


この哲学に人は魅力を感じ、あこがれ、助けられ、そして時には哲学のみで終息する。


Less is More. は「持たない、ゆたかさ」というコンセプトで、寝具レンタルのニュービジネスモデルに取り組むクライアントのために用意した。

ヴァージニア州レストンに住んでいたアメリカ人のライフスタイルからインスパイアされた個人的ないきさつが背景にある。


物質的に持たないこと(Less)で、精神的な満足を得ること(More)が、理想的なセオリーとなる。

ただ、Lessイコール、即、Moreにはならない。

Less Moreの間に、物質的なゆたかさから解放されることで得るゆとり(スペース)を精神的な満足で満たしていくライフスタイルが不可欠となる。 この部分が達成されないと、単にストイックを強いることになり、かえってストレスが増える。そのストレスを埋めるために、また物質的な満足に走り、事態はさらに複雑になる。


“More than enough.”とよくアメリカ人が言う。

直訳すると充分以上という意味で、過剰になることを防ぐ、必要以上の行為や量を抑える場合の使いやすい表現である。

その場合、もちろん、何が充分であるのか、その適量、適度を知っていないといけない。


ニューオリンズ生まれで 、東大建築学部を卒業したANZY BROWN氏が日本の江戸時代のライフスタイルについて書いたユニークな本“Just Enough” がある。(日本語版「江戸に学ぶエコ生活術」)

自然にさからわず、創意工夫で、 健全かつゆたかに暮らしていた当時の人々の価値観とライフスタイルをイラスト入りで、分析、解説している。

Lessons in Living Green From Traditional Japan.

というサブコピーでもわかるように、自然環境と共に生きることが条件だった当時の暮らしの知恵が事細かに紹介されている。


自分自身の仕事をときおり虚しく感じることがある。

これ以上作ってどうなるのだろうか?という単純な疑問がわいてくる。

もちろん、人の暮らしを素敵にするデザインはたくさんあるし、そういうデザインをするデザイナーもたくさんいる。


そんな中で、せめて心がけることは、本物を見極める目を養うこと。

本物は人でいうと、穏やかで寡黙であたたかい人。

穏やかで、寡黙で、あたたかいモノが見つかると、また手に入れたくなる。

そういう人と出会うと、親しくなりたいと思うのと同じだ。


そうやって、今日もモノを減らすプロジェクトは続く。

posted by YOKO at 02:01| Comment(0) | journal
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